bouncy
ABOUT US
Art

美術館にナイトクラブをインストール! 現代アーティストMESの実験的展示「OUTTA STEP」とは

現代アーティスト集団MESのメンバー新井健の個展「OUTTA STEP」が、ワタリウム美術館地下一階「オン・サンデーズ」で、2018年9月15日から10月14日まで開催中。

コンセプトは「美術館にクラブカルチャーをインストールする」こと。ターンテーブルを回すと、モニターに映し出された作家が踊りだすインタラクティブな作品や、実際にクラブで用いていたレーザーをアニメーションにした作品、ニードルがついたミラーボールなど、ユニークな作品が並ぶ。

キーワードは「渋谷」「ダンス」「青山蜂」

作品群は、騒音や風営法の問題で摘発や立ち入りが相次ぐ渋谷クラブカルチャーをオマージュを捧げたもの。

クラブが点在する渋谷一帯は、再開発の工事が続く。ペイント作品は、その工事現場で実際に使われている仮囲いをキャンバスに用いて描かれた。そしてその中には、うごめく無数のショベルカーの映像を展示。新井氏が渋谷をフィールドワークをしている際に、ショベルカーがダンスを踊っているように見えたいう。

そして、ターンテーブルの作品で作家が踊っているのは、今年1月に摘発があった老舗クラブの「青山蜂」の前。無許可でクラブ営業を行い、客を踊らせたとして営業休止を余儀なくされた店だ。

踊らせてはいけない時間帯の踊らせてはいけないエリアにいる作家を、作品を媒介にすることで踊らせることができる実験的な試み。踊らせることを楽しめると同時に、規制された踊らせる行為について大きな疑問符が浮かぶ。

他方、壁にはMESが得意とするネオンのようなレーザーで「踊り明かそう 日の出を見るまで」と投影されている。

自分は危うい場所でアートをしていた

踊ることにフォーカスしたのは、MESのこれまでの経緯に理由がある。

MESは新井健氏と谷川果菜絵氏が東京藝術大学在学中に結成したアーティスト集団。ステレオタイプな価値観を切り開き、誰もまだ見たことのないビジョンを見せることを目標においており、レーザーによる表現を中心に、パフォーマンスやライブの演出を手がけてきた。

左から新井健氏と谷川果菜絵氏

MESがレーザーによる表現を始めたのは、新井氏の「空間に文字を彫刻したい」という発想によるもの。作品を発表する中で「レーザーを使って青山蜂でVJをしないか」という声がかかるようになり、コンスタントにクラブイベントで作品を発表してきた。

新井氏は、青山蜂でパーティーを盛り上げながら、その場ダイレクトに受けた客のリアクションを糧にスキルを磨いてきた。新井氏にとってパーティーはアート作品の一部で、その場限りのインスタレーションだという。

しかし、摘発後に大きな疑問を抱えることになった。「自分のフィールドとしていた表現の場が、無許可営業で摘発される危うい場所だったのか」と。今回の作品は、新井氏自身の葛藤や疑問を鑑賞者とともに咀嚼する試みでもある。

ストリートカルチャーとクラブカルチャーを接続

9月15日の夜にはオープニングパーティーが開かれた。THA BLUE HERBのO.N.Oやヒューマンビートボックス日本王者のSh0hなど、様々なアーティストが集い、まるでクラブのようなパーティーが美術館に持ち込まれた。MESが得意とするレーザーでDJブースが照らされ、客は自然と身体を揺らす。その周辺には新井氏の彫刻やペイントが並ぶ。ストリートカルチャーとクラブカルチャーがひとつの場所に接続された。

その場限りのパーティーの一体感は、確かに一過性のインスタレーションのようでもあり、一般的な美術館のイメージを大きく変える試みだったといえるだろう。

正しいステップを模索する

最終日には、再びパーティーが行われる予定。その時には仮囲いが外され、いくつかの映像作品は取り外される。

その代わりに現在進行系のクラブカルチャーの表現者たちが集う一夜になるだろう。新井氏は「街も踊ってるし、心臓が鼓動しているだけでそれは音楽で、ずっと踊りは続いていて、正しいステップの仕方がみんな違ったりわからなかったりする。鑑賞者と一緒に考えていきたい」と語る。

未来の軽やかなステップはどんな音色が似合うだろうか?

MES(メス)

ワタリウム美術館
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3丁目7−6
定休日:月

あなたにオススメ

RECOMMEND

PICK UP