bouncy
ABOUT US
Social Good

「喫茶ランドリー」はなぜ面白いのか? 小さな空間から始まった大きな社会実験

「喫茶ランドリー」という言葉を聞いて、あなたはどんなお店を想像しますか? コインランドリーが併設された、ちょっとオシャレなカフェを想像されたかもしれません。

でも、墨田区千歳にある「喫茶ランドリー」を訪れたら、そんな想像をはるかに超える不思議な光景に出会えます。店で目にするのは、非日常的な空間ではなく、輝くような素敵な「日常」です。なぜ、喫茶ランドリーは面白いのか。店を訪れた筆者が、その秘密を紹介したいと思います。

自由にこの場所を使ってください! 客が過ごし方をデザインできる喫茶店

喫茶ランドリーは、墨田区千歳のマンションが立ち並ぶ静かな住宅街の中にあります。
築56年の1階にあるお店は、大きな窓枠で外からでも店内が見渡せる開放的なつくり。喫茶スペースの奥には、洗濯機が並ぶいわゆるランドリーカフェで、見た目は、居心地の良さそうな喫茶店です。

でも、このお店が面白いのは、その理念にあります。

喫茶ランドリーが掲げるのは「どんな人にも、自由なくつろぎを提供する場所」。つまり、ここはお店側が決めたコンセプトを楽しんでもらう場所ではなく、日々、訪れた人たちが自らの発想で、店の役割を変化させていく場所なんです。

「こうやって過ごしてくださいね」という押し付けがない分、自然と客はここで何をしようかと思案しながらやってきます。

会社の同僚で集まってスクリーンを広げて会議をしたり、裁縫教室をしたりするのは序の口です。時には元美容師だった客が店で知り合った客の散髪をしたり、突然ピアノを弾く女性があらわれて昭和歌謡教室がはじまったり。週末になると、ターンテーブルが持ち込まれて店内は即席のディスコフロアに早変わりしたりします。


店側が、客の能動性を受け入れるだけで、思いもつかなかったような過ごし方が生まれます。もちろんひとりでぼんやりと、ただコーヒーを飲むことも洗濯をすることもできます。

思い思いに過ごす人たちがひとつの空間で交わり調和する奇跡

店内は決して広くありません。こんなに客が思い思いに自由に過ごしたら、窮屈なのではないでしょうか? でも実際は、お客さん同士が小さな空間で全く別々のことをしているのにも関わらず、不思議な調和が生まれています。むしろ、隣に客に話しかけたり、一緒に何かを始めたりして、それぞれ別にやってきた人たちが交わることが、よく起きるそうです。「話しかけてもいい空気感」のようなものが、喫茶ランドリーにはありました。

なぜ不思議な調和が起きるのか。喫茶ランドリーのオーナーで、株式会社グランドレベル 代表取締役の田中元子さんは、「この店に来る人たちは、店内にいる人たちと同じ時間を共有したいという前向きな気持ちで、それぞれにいい体験をしたい、と考えてくれているからでは」と言います。

目指したのはダサすぎずカッコよすぎない公民館のような場所

オーナーの田中さんに、喫茶ランドリーの魅力について聞きました。

ーー喫茶ランドリーが目指すサービスって何ですか?

田中:大手資本が入り、営業スタイルが画一化された店舗が増えるなかで、「お客さんの能動性を引き上げ、受け入れる場所をつくっていく空間実験」をしたかったんです。この空間を訪れた人が、ここで何かしたい、こんなことできるんじゃないかな、とか自分がしたいことを発露していくようになったらいいな、と思いました。

人ってダサすぎる場所も嫌だし、カッコよすぎても気後れしちゃう。普通のカフェって完成度が高く、どの街に行っても同じような内装で出迎えてくれることが約束されているじゃないですか。喫茶ランドリーは完成度を高めないし、常に変わり続ける要素があるということを意識しています。

例えると、普通のカフェはグラスに水がこぼれそうなほど入った状態で、喫茶ランドリーは最低限の水しか入っていないような感じです。色々な意味でセルフサービス、お客さんが参加してくれてはじめて成立するサービスなんです。

これって「公民館」のような場所だとも言えると思います。私は喫茶ランドリーが、お客さんが自ら店を作っていくような、私設の公民館のような使われ方であってほしいと思っています。

ーーこの場所を通して人のつながり方がどういう風に変わってほしいですか?

田中:都内では、マンションが立ち並び縦方向に人口が増えています。それなのに、街は人気が感じられません。マンションやオフィスの一階がエントランスホールやガレージになっていることが多く、それでは人の居場所がなく、自ずと人の気配がしないようになるからです。

建物の1階は、できるだけ人々が自由に参加できる場所であって、あまねく人たちの顔が見えるようになるといいな、と思っています。

洗濯機にも喫茶店にもこだわっていないんです。それより店を訪れる彼、彼女らがやりたいことを能動的に実現できる場所を目指しています。

ゆくゆくは喫茶ランドリーを街の人たちに任せていきたいと思っています。2軒目、3軒目も、その街にあった空間を模索して、そこに住む人たちが、日常を楽しいと感じられるような街づくりがしたいですね。

・ ・ ・

喫茶ランドリーが始めた、小さな空間で人の能動性を引き上げる大きな社会実験。殺伐とした日本社会で、ほっと温まるそんな人と人のつながりが、喫茶ランドリーにありました。気軽に、気負うことなく、能動的に参加していけるこんな場所が、街のいたるところにあれば、もっと豊かな日常を送れるかもしれませんね。気になった方はぜひ、足を運んでみてください。

喫茶ランドリー
■所在地
東京都墨田区千歳2丁目6-9 イマケンビル1階
営業時間: 10:00-20:00

あなたにオススメ

RECOMMEND

PICK UP